
山形には、全国的にはまだ知られていないものの、地域に根ざした美しい和菓子が数多く存在します。
その中でも、ひときわ上品な印象を持つのが「まゆはき」です。
「まゆはき」って、繭のお菓子?
最初にそう思ったのですが、この「まゆ」は眉のことで、まゆはきとは昔の女性が眉を整えるために使った小さな刷毛のことを指しています。
「まゆはき」の由来は、松尾芭蕉が詠んだ句「まゆはきを おもかげにして べにの花」にちなんだ和菓子です。
菓子は、佐藤屋得意の完熟梅の甘酸っぱい寒天を、米粉の煎餅「ふ焼き」をスライスしました「おぼろ種」という生地で挟みまして、上に本紅で一筋「眉型」をあしらったもの。
紅花摘みの様子を見ながら奥の細道を歩いた松尾芭蕉が、遠く京都へ行く高級品の紅花と、摘む人々を見比べて詠んだ「まゆはきを おもかげにして 紅の花」の句から銘をした、落ち着いた菓子です。
※乃し梅佐藤屋公式サイトより引用
見た目がとても上品で、軽やかなせんべいに挟んであるのが、梅の風味の羊羹が特徴の和菓子で、外側はさくっとほどけ、中に使われているのが山形の伝統菓子である乃し梅が使われています。
派手さはありませんが、その控えめな美しさが多くの人に愛されています。
以前、テレビ番組でもスイーツ女王といわれている食通のぼる塾田辺さんが紹介していた和菓子のひとつでもあります。
【山形で愛される理由】

山形県は、自然が豊かで、昔からある和菓子文化が発展してきた地域です。
寒暖差のある気候や豊かな水資源が、上品な和菓子作りに適しているとも言われています。
「まゆはき」もその土地の文化の中で育まれてきたお菓子で、観光客向けというよりは、地元で静かに親しまれてきた存在です。
贈り物やお茶菓子として選ばれることが多く、特別な場面で登場することが多い和菓子です。
【上品と言われる理由】

まゆはきが「上品な和菓子」と言われる理由は主に3つあります。
1つ目は見た目です。
派手な色や装飾はなく、白を基調とした落ち着いた外観が特徴です。
2つ目は味わいです。
甘さは控えめで、素材の風味を生かしたやさしい味に仕上がっています。
3つ目は食感です。
ふんわりとした軽さがあり、口の中でほどけるような感覚が楽しめます。
見た目・味・食感すべてにおいて控えめで調和がとれているため「上品」という評価につながっています。
【どんなシーンで食べられているのか】

まゆはきは日常的なお菓子というよりは、少し改まった場面で登場することが多い和菓子です。
来客時のお茶菓子や、贈答用として選ばれることもあります。
鮮やかな紅色の一筆は本紅を使用しているそうです。
原材料
砂糖(国内製造)、梅肉、水飴。寒天、もち米、澱粉(米、馬鈴薯、とうもろこし)/着色料(紅花赤、赤3、赤106)
※乃し梅本舗佐藤屋のまゆはきパッケージ表記より引用
【まとめ】

まゆはきは、山形県で受け継がれてきた、非常に上品で繊細な和菓子です。
松尾芭蕉の句とされる
「まゆはきを おもかげにして 紅の花」
山形を旅した芭蕉が、紅花を見て詠んだ句で、鮮やかに咲く紅花の姿に、女性が化粧を整えるときの面影を重ねています。
自然の中に人の美を見出す、繊細な感性が感じられる一句です。
この「紅の花」、つまり「紅花」はかつて山形を支えた重要な産物で、江戸時代には日本一の紅花の産地として知られていました。
紅や染料として使われる紅花は非常に高価で、最上地方で生産されたものは最上川を下り、京や大阪へ運ばれていったとされ、山形にとって紅花は、単なる植物ではなく文化と経済の象徴だったといえます。
派手さはないものの、芭蕉の句と紅花の風景を思い浮かべながら味わってみたくなる和菓子です。