
ロングヒットを続けている吉田修一原作の小説を映画化、李相日監督の「国宝」を観られた方も沢山いらっしゃるのではないでしょうか。
2025年6月6日に全国公開されてから現在まで上映スケジュールは少なくなってきているもののまだ上映中ではありますが、そろそろ上映終了間近といったところでしょうか(11/3現在)
連日多くの観客を動員し高い興行収入を記録していますね。
11/5にその年の世相をあらわす2025年「新語・流行語大賞」の候補となる30のノミネート語が発表されましたが、「国宝(観た)」がノミネートされました(流行語大賞は12/1に発表されます)
私は公開されてすぐに観たわけではなく、少し落ち着いてから観ようと思っていたので、周りから良かったよと聞いていたり、会場でも国宝を観るのは2回目、3回目という声もちらほら聞こえてきていました。
歌舞伎の世界はおそらく多くの人が経験したことのない未知の世界なのではないかと思うのです。
私も歌舞伎は観たことがなく、原作も読まずに映画国宝を鑑賞しました。
【国宝の上映時間と鑑賞後の正直な感想】

国宝は上映時間3時間という長編映画なのですが、客層は幅広く、映画公開から数ヶ月経つのにもかかわらずほぼ満席に近い中、誰一人として最後まで席を立つ人がいなかったのにはまず驚いたのですが、それくらい目が離せないというか引き込まれる世界であっという間の3時間でした。
観終わったあとは、二人分の人生を生き抜いたような、いい意味での脱力感というか人生を全身全霊で走り抜いた感が半端なかったです。
俳優さん達がまず素晴らしく歌舞伎役者にしか見えませんでしたし、この映画に対する熱意と気迫を肌で感じましたし、映像美は思わずため息が出るほどに圧倒的に美しかったです。
女性目線で見ると、女性が裏切られたり傷付けられたり共感できない部分も正直あるのですが、歌舞伎役者の方々は共通して女性を惹きつける不思議な魅力があると思いました。
主演の吉沢悠さんと横山流星さんのお二人はもともと端正なお顔立ちでもあるので女形を演じていると女性よりも美しいのではないかなと思う場面も多くありました。
映画館で観れて良かった作品でした。
【国宝のあらすじ|キャスト|血筋か芸か|国宝になるまでの人生】
原作の吉田修一さんが3年間歌舞伎の楽屋に入った経験を元にしているそうです。
芸の道に一生を捧げた俊介と喜久雄。
喜久雄が15歳から、国宝になるまでの人生が描かれています。
主なキャストは
・吉沢量さん(花井東一郎役)
・横山流星さん(花井半弥役)
・高畑充希さん(福田春江役)
・寺島しのぶさん(大垣幸子役)
・森七菜さん(彰子役)
・見上愛さん(藤駒役)
・黒川想矢さん(少年喜久雄役)
・越山敬達さん(少年俊也役)
・渡辺謙さん(花井半二郎役)
・田中泯さん(小野川万菊役)
・永瀬正敏さん(立花権五郎役)
・宮澤エマさん(立花マツ役)
血筋か芸か、何もかも正反対の二人が同じ夢を追いかけた先にあるもの。
跡取り息子として生まれ将来を約束された御曹司、横山流星さん演じる俊介。
親を目の前で失い歌舞伎役者の家に引き取られた吉沢亮さん演じる喜久雄。
「本物の芸は刀や鉄砲より強いねん」という喜久雄を引き取った歌舞伎の名門「上方歌舞伎」の渡辺謙が演じた当主花井半次郎の言葉がとくに印象に残っています。
悪魔と駆け引きをし、悪魔に魂を売った喜久雄。
そこから人生の歯車が大きく回り始めます。
喜久雄が国宝になるまでに失ったものもたくさんありました。
ときには兄弟のようにライバルのように同じ夢を追いかけるがごとく、俊介と喜久雄にはどちらにもそれぞれ比べられない苦悩があり葛藤があったと思いますが、歌舞伎に対してはお互い同じくらいの愛があったのではないかと思いました。
【あとがき|人生の最後に見たい景色はなんだろう】

吉沢悠さんは踊りだったり所作であったり、1年半くらい稽古や役作りをしていたそうで、とても見ごたえのあるものでした。
人生は不条理で綺麗ごとだけでは生きられないけど、とても壮大で美しかったと思いました。
主題歌は「Luminance」原摩利彦feat.井口理(kingGnu)なのですが、作品の余韻がいつまでも消えません。
誰しもこんなはずじゃなかったとか、悩みながらもがきながら何もない人生を生きている人は一人もいないと思うんですよね。
自分の人生の先には何があるんだろう?
本当の歌舞伎という伝統芸能に触れたくなりましたし、自分にとって人生の最後に見たい景色は何だろう、何を見つけられるだろうと思わずにはいられない映画かもしれません。