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映画レビュー|秒速5センチメートル|過去に未練があり前向きになれない人におすすめ

2025年10月10日に全国公開された秒速5センチメートルの実写映画を観てきました。

2007年に公開された新海誠監督の原作のアニメ版は観ていなかったのですが、主演のSixTONESの松村北斗さんがこの映画についてインタビューされているところを見て、言葉の選び方ひとつひとつが花びらのように繊細で美しく丁寧だったのが印象に残っていたのと、ロングヒットしている国宝でも出演シーンこそ多くはなかったけれどひときわ存在感を放っていた森七奈さん、同じく国宝にも出演していた透明感のある演技が印象的な高畑充希さんも出演していたのもあって、ぜひ観てみたいなと思っていました。

ネタバレがありますので、まだ観ていない方はご注意ください。

 

小説秒速5センチメートル (角川文庫) [ 新海 誠 ]

 

 

【秒速5センチメートルとは桜の花びらの落ちるスピード】

過去の恋を忘れられない未練と未来への漠然とした不安や焦燥感を抱えたまま大人になってしまった30代になった遠野貴樹。

貴樹の小学校時代の初恋から大人時代までの18年間の人生が描かれています。

貴樹と明里はお互い転校生で通じ合うものもあり、同じ月日を一緒に過ごしていましたが、小学校卒業と同時に明里は引っ越し、明里と離れ離れになった貴樹は

「2009年3月26日、またここで会おう」

と雪の降る桜の木の下で約束を交わし、時は流れます。

誰かに伝えられなかったこと、誰かと交わした約束、叶えられなかったことだったり、どこか過去に置き忘れてきたような思いだとか、思い出すと辛く悲しく苦しくなってしまうような思いが誰しも心の片隅にあるのではないかなと思うのです。

貴樹もまたずっと心の片隅で埋められないさみしさを抱えながら、その約束を忘れられずに大人になっていました。

映画のタイトルの秒速5センチメートルとは桜の花びらが落ちるスピードなんだとか。

写真家でもあるという奥山由之監督が撮った何度も出てくる儚く美しい雪のような桜の映像もまた圧倒的に印象的で、それがまたそれぞれの登場人物たちの過去と今と未来を美しく優しく包みこんでくれているように感じました。

自分が何を大切に思っているかに気付くことができる作品なんじゃないかなと思います。

 

www.ayumylife.work

 

【一生で出会う言葉の数の中からたったひとつの言葉を残すとしたら】

この映画には数字のキーワードがいくつかちりばめられているのですが、

「人が一生で出会う言葉の数って約五万語以上あるそうですよ、その中から一言、残すとしたらなんて書きますか」

と、科学館の館長小川が貴樹に問いかけるシーンがあります。

そのときは答えられなかった貴樹でしたが、貴樹と明里がホームで別れるシーンとプラネタリウムの場面での明里の言葉がこれからの貴樹の人生を前向きに生きていける言葉のひとつになるんだろうなと思いました。

私だったら五万語以上のうちひとつだけ言葉を残すとしたら、どんな言葉だろうなと考えたときに思い浮かんだ言葉がひとつあって、そのときに泣き崩れたことを思い出しました。
たった一言の言葉で泣き崩れたことははじめてのことでした。

他の人が聞いたらなんとも思わない言葉だと思うけれど、そのときの私にとっては一番必要な言葉で誰かに言ってもらいたかった言葉だったんですよね。

その言葉でどれだけ救われたかわかりません。

言葉の力ってとても大きい。

ひとつだけ言葉を残すとしたら、過去ではなく今を生きるため、この先の人生で前向きに生きていける言葉を残したい。

皆さんだったらどんな言葉をたったひとつ残したいですか?

過去を振り返るいいきっかけになるかもしれません。

過去を振り返ってみると、忘れていた未来に進むための夢だったり自分らしさだったり好きなものの原点を思い出して背中をそっと押してくれるような言葉が見つかるかもしれません。

生きていくうちにこれからその言葉に出会えるかもしれません。

【人と人が出会える確率と会えそうで会えないすれ違い】

すれ違い、というのもこの映画のキーワードになっています。
人と人とが出会う確率って0.0003%なんだそう。
そう思うと奇跡だし、再会の確率なんてもっと低いけれど、それでも出会えるのなら意味があることなんだなと思えます。

プラネタリウムのシーンでは同じ場所にいるのに会えそうで会えない

プラネタリウムの鑑賞と子供の頃の天体観測のシーンが重なります。

プラネタリウムでの松村さんの声がまた良かったです。

約束の日に約束の場所に貴樹は行ったけれど明里は来なかった。

忘れていたわけではなくて、明里は約束の日を覚えていたけれど行かなかった。

貴樹には約束を忘れていてほしい。

明里のその理由に愛があった。

貴樹がその明里の想いを館長の小川から聞かされたことによって、18年間の思い出が救われたものがあったのではないでしょうか。

生きていると過去は誰にでも当たり前にあって、こうしているだけでも過去は作られていくものだけど、未来に優しく寄り添っていける言葉に出会えるだけでもこれから先の人生を明るく照らしてくれる灯のように救われるものがあるんじゃないかなと思いました。

【あとがき】

山崎まさよしさんの劇中歌「One more time One more chance」も、米津玄師さんの主題歌「1991」も良かったです。

映画の音楽は映画を観終わったあとも余韻を残しますよね。

「1991」は貴樹の心情そのままだと思ってしまいましたし、山崎まさよしさんの劇中歌も心に沁みました。

主なキャストは

・松村北斗さん(遠野貴樹役)

・高畑充希さん(篠原明里役)

・森七菜さん(澄田花苗役)

・吉岡秀隆さん(小川龍一役)

・宮崎あおいさん(興水美鳥役)

・青木柚さん(遠野貴樹の高校生役)

・上田悠斗さん(遠野貴樹の幼少期)

・白山乃愛さん(篠原明里の幼少期)

・又吉直樹さん(柴田治役)

種子島でのロケット打ち上げ場面で花苗が話していたロケット輸送の時速5キロという数字、電車が大幅に遅延しながらも果たせた岩舟駅での一度目の再会、渡されなかった明里の天文手帳と風で飛ばされた貴樹の手紙踏切でのすれ違い、プラネタリウムのシーンなど秒速5センチメートルの二人の巡りあわせを意味する場面がたくさんあります。

どの場面もひとつひとつが未来に繋がる大切な過去の出来事。

桜、海、山、雪などの自然、移り変わっていく季節もまたそれぞれの人生と心情をあらわすかのように一瞬一瞬が美しく描かれていました。

過去に未練があり前向きになれない人が、この作品を観たときにきっと大丈夫と自分も思えるような映画かもしれません。

秒速5センチメートル [ 新海誠 ]

 

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